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遥か彼方の水平線が、色を変えていく。
東の空にいた星々は、徐々に姿を隠し眠りにつく。
一年に一度の「特別な夜明け」を待つ二人は、自然が織り成す光景に見とれていた。
「ユリ、もうすぐだ。車からでる?」
「はい・・・・・。」
車から出て、海岸を歩くユリの後ろ姿を追う。
俺はたまらず、自分のコートを広げて彼女を閉じ込めるように背中を抱いた。
「あったかい・・・。」
「俺も・・・・・。」
彼女の髪に顔を埋めて口づけ、この世でたった一人の存在を確かめる。
昇ろうとする太陽に目をこらす彼女は、俺の胸の鼓動が早く強くなっていることなど知る由もない。
いよいよだ・・・・・
「あ、日の出ですね?・・・わぁ!」
ユリの言葉に顔を上げると、ついさっきまで欠片だった光が眩しいほどに二人を照らしている。
「夜が明けた・・・。」
「・・・・・きれい。」
「・・・・・。」
言葉がでなかった。
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