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「俺と、結婚してくれないか?」
「え・・・・・。」
時が止まったように、一瞬彼女の体が固まった。
俺は抱き締めていた腕を緩め、ゆっくりとその体を振り向かせる。声も出せない彼女の頬を右手で覆うと、指先から動揺が伝わってきた。
「ユリ?」
「今・・・・・な・・に?」
「・・・・・・。」
俺には、ユリしかいない。
こんなにも愛しくて、大切で、側にいて欲しいと願う相手は。
万が一、今彼女を手離したなら、彼女以上の人は現れないだろう。
たとえ、百年さがしても、二百年さがしても。
後は自然と、口から言葉が溢れてきた。
「ユリはまだ若いから、考えられないかもしれないけど、俺は真剣だよ・・・。」
「・・・・・。」
「この先に千年待っても・・・おまえしか考えられない。」
「・・・・・。」
彼女の頬を、涙がつたう。
「ユリ・・・氷室ユリになってください。」
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