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「ユリ、今日はもう家まで送るよ。早く帰って休まないと。」
「・・・・・。」
「ん?・・・ユリ?」
「・・・・・帰りたくない。」
「その上目使いは・・・やめろ。ヤバい。」
「・・・・・だめ?」
「・・・やめなさい。マジでヤバいから。」
まったく・・・
そんな「わざ」をいつ覚えたんだか・・・
あー完全に俺、弄ばれてるな・・・
ま、いいけど・・・
笑いながら無言でその場を離れ、一人寝室に入る。
ユリを送るために外出用のジャケットを羽織り、そしてサイドテーブルの引き出しを開ける。
「・・・・・。」
黒い小さな箱をジャケットの内ポケットへしのばせて寝室から出て行くと、それに気づいてユリが立ち上がった。
帰る支度をしようとバックに手を伸ばす彼女の肩を、そっと制止する。
そのままソファへもう一度座るよう、いざなう。
「え・・・・・どうしました?」
「・・・・・。」
おもむろにユリの前に膝まづき、内ポケットに手を入れながら彼女の顔を見上げる。
体を硬直させて何度もまばたきをしながら、不思議そうに俺を見る彼女。
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