3/3
4415人が本棚に入れています
本棚に追加
/194ページ
昔から、女性とのコミュニケーションは苦手だ。 別に女嫌いというわけではないが、扱い方がまったくわからない。 自分を取り繕ってまで、女性をチヤホヤする意味が俺には理解出来ない。 誕生日には高額のプレゼントをして機嫌をとり、夜中の電話で呼びつけられてもホイホイ出掛けていき、良いようにあしらわれて結局フラレる男を何人も見てきてる。 そこまでしてモテたいのか、と少々冷めていた。 もちろん、世の中そんな女ばかりじゃないと知ってはいるが・・・。 「氷室、内線2番に家庭用品の大崎係長から。」 「あ、納入の件か・・・はい、お願いします。」 デスクの引き出しから取り出したファイルを広げながら、電話の受話器に手をかける。 ファイルには、受注した商品伝票が何枚も綴られており、今日も残業してその処理に追われることだろう。 百貨店の外商という仕事柄、担当する顧客のために中途半端なことは出来ない。 「仕事仕事で、いつ女と付き合う時間があるんだっての。・・・ったく。」 売場責任者との会話をする少し前、俺は小さな溜め息とともに一人言を呟いていた。 この時、俺は何も知らなかった。 自分の考えが180度変わるような出来事が、待っていることなんて。 そして、遂にその日はやってきた・・・・・
/194ページ

最初のコメントを投稿しよう!