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「氷室、おせえよ。」 「悪い、寝てた。」 会場へ到着すると、同期の小野寺が近寄ってきた。 紺の縦縞スーツを着てブルガリの時計をし、ネクタイと同色のポケットチーフまでつけている。 普段の麻雀をする時とは違い、いかにもパーティーに参加する姿だった。 「まあ、来たからいいけどよ。でもお前、その格好はないんじゃないの?」 「マズかったかな。」 「いや、どうせ同じ会社の連中で身内のような奴ばかりだし、マズくはないと思うけどな。俺たちを見てみろよ。逆にお前、めちゃくちゃ目立つぜ?」 「マジかぁ・・・。」 会場を見回すと、ほとんどが外商部の社員だったが、やはり派手な服を着た女性があちこちにいた。 この雰囲気に、一瞬でウンザリする。 主役の二人へ挨拶だけはして、あとは適当に酒を飲みながらなるべく目立つことはないように隅のソファへ座り、ぼんやりと人々を見ていた。 まずい。 変な時間に中途半端に寝たから、まだ眠い。 俺はアクビを噛み殺し、時々話しかけてくる外商社員の話へ一応返事をしながら、眠気とたたかっていた。 その時、会場の奥方向から俺を呼ぶ声が聞こえた。 「おーい、氷室ーっ!!!」 沢田たち数人が、そこに座っていた。
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