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俺の隣に、昨日諦めようとした彼女がいる。
その事が信じられず、夢の中にいるようだった。
「もう、泣かないでいられるか?」
「はい。もう泣きません。送ってくださって、ありがとうございました。」
「ん、ならよかった。・・・・俺・・・その、慣れてなくて・・・・・・気が利いたことも言えないで、ごめんな?」
彼女は微笑んで、首を横に振った。
再び駅まで戻る俺を、彼女は家の前でいつまでも見送ってくれた。
時々振り返って俺が小さく手を挙げると、彼女は遠慮がちに小さな手を顔の横で振って、笑顔を見せた。
さっき二人で歩いた道を、一人で戻る。
まだ、自分の体が彼女の温もりを覚えている。
まだ、この手が彼女の柔らかさを覚えている。
体の中から、力が湧いてくるのを感じた。
「はぁ・・・・・俺、ヤバいなぁ。」
吐き出した息が、冬の空に白く留まって消える。
その先にある星空を、仰ぎ見ていた。
星空に浮かんだのは
やはり、彼女の笑顔だった・・・・・
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