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「マジかぁ・・・・・。」
つくづく、自分の恋愛音痴に嫌気がさす。
彼女が気持ちを伝えてくれたことに、すっかり舞い上がっていた俺は、連絡先さえ訊かずに帰ってきてしまった。
それに気づいたのは、ほんの10分前。
自宅へ戻ってから入った、風呂の中だった。
「バカか、俺・・・。」
自虐的な一人言を呟き、冷蔵庫から缶ビールを1本取り出した。ソファへドカッと身を落とし、テーブルに一口飲んだビールを置く。
ふと、両方の手のひらを、膝の上に広げて見る。
彼女を、この手で確かに抱きしめた。
恋愛を遠避けてきた俺が、本気で惚れた彼女。
『私・・・・私が好き・・・なのは・・・ ひっ・・氷室さん・・・です。』
彼女からそんな言葉を貰えるとは思ってなかった。
普通はこんな時、「今日はありがとう」とかメールでもすんのか?・・・
いや、泣いていたのに「ありがとう」は変か?・・
っつうか、その前に連絡先も訊かねぇで、俺、何をやってんだよ・・・
「あーーーっ!!」
広げていた両手で膝をバンッと叩き、また一口ビールを飲んだ。
天井を見上げて、溜め息を吐く。
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