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同じ会社にいる彼女。 今までのように、いつかばったりと会えるだろう。 その時は、彼女に連絡先を訊いてみよう。 そして今度は俺から食事に誘おう。 「・・・・・会いたい。」 自然と口から出た言葉に驚く。 今までの自分ではあり得なかったその感情が、もはや止められないところまで来ているのだと、悟った。 彼女とすぐに会えると思っていたが、1週間が過ぎ、2週間たっても会うことはなかった。 会いたいと願っている時こそ、その笑顔はいない。 以前なら店内を歩く彼女のことを、もっと見つけられていたのに。 そんなある日のことだった。 会社の帰りに、駅のホームで電車を待っていた。いつもとは違う階段を下り、12月の冷たい風に晒されながら、柱にもたれ掛かる。 柱の裏側から、風を避けるように現れた人影。 それは・・・彼女だった。 「・・・・あ。」 お互いに驚き、その場に動けなくなる。 あの非常階段で泣いていた日から、初めて会えた。
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