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「あのさ・・・。」
俺の問い掛けに、彼女は小さく会釈をしながら近づいてくる。
「あのさ、アンタの連絡先、教えてよ。」
「・・・・・え?」
「アンタと・・・メシでも一緒にどうかと思ったんだけど・・・・考えてみたら連絡先を聞いてなかったから・・・その・・・ダメ?」
「・・・・・。」
「ずっと、アンタに会いたかったんだ。」
彼女は大きな目を見開いて、俺をじっと見ている。
茶色の手袋を嵌めた小さな手を、口に当てて動かなくなった。
「・・・本当に?」
「ああ。・・・あの日帰ってから、アドレスも何もきいていないことに気づいたんだけど、遅くてさ。・・・そのうち会えると思ってたら、なかなか会えなくて。・・・その・・・どう?」
「え・・・はい。もちろん。」
「あー、よかった。連絡先なんて、女の子にきいたことねぇから。・・・うわっ、緊張したー。」
いつの間にか、手にべっとりと汗をかいていた。
顔が紅潮していくのが、自分でわかる。
チラッと彼女を見ると、エクボを作り笑っている。
あの日から待ち望んでいた、探し続けていた、愛しい笑顔だ。
またこの手で、抱きしめたくなった・・・
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