4407人が本棚に入れています
本棚に追加
/194ページ
2
翌日の結婚式。
井上さんも奥さんも、幸せそうにしていた。
同じ会社の社員として二人を素直に祝福したが、漠然と自分は一生結婚しなくても構わない、と思っていた。
それくらい、俺は「恋愛」というものに興味がなかったのだ。
この時は。
「氷室。2次会パーティーまで時間があるけど、お前はどうする?」
披露宴がお開きになり会場から出ると、土屋課長が話しかけてきた。
「今日は休みをもらってるんで、一度家へ帰って休んできます。」
「そうだな。昨日も遅くまで残業して疲れてんだろ?お前、時々アクビしてたぞ。寝てこい寝てこい。」
「あー、はい。ひと眠りしてきます。」
「じゃ、また後でな。」
最近小さなクレームが続いて、疲れていた。
2次会パーティーの開始時間までは4時間ほどあったので、電車に乗って自宅アパートへ戻る。
礼服から着替えると、ものの数分で睡魔におそわれ、次に目が冷めた時は辺りが暗くなっていた。
「うわ、やっべぇ。」
飛び起きて顔を洗い、出掛ける支度をする。
着ていく服を少し考えたが、気が進まないことも手伝って、普段着のコットンシャツとジーンズ姿で、パーティー会場へ向かった。
最初のコメントを投稿しよう!