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翌日の結婚式。 井上さんも奥さんも、幸せそうにしていた。 同じ会社の社員として二人を素直に祝福したが、漠然と自分は一生結婚しなくても構わない、と思っていた。 それくらい、俺は「恋愛」というものに興味がなかったのだ。 この時は。 「氷室。2次会パーティーまで時間があるけど、お前はどうする?」 披露宴がお開きになり会場から出ると、土屋課長が話しかけてきた。 「今日は休みをもらってるんで、一度家へ帰って休んできます。」 「そうだな。昨日も遅くまで残業して疲れてんだろ?お前、時々アクビしてたぞ。寝てこい寝てこい。」 「あー、はい。ひと眠りしてきます。」 「じゃ、また後でな。」 最近小さなクレームが続いて、疲れていた。 2次会パーティーの開始時間までは4時間ほどあったので、電車に乗って自宅アパートへ戻る。 礼服から着替えると、ものの数分で睡魔におそわれ、次に目が冷めた時は辺りが暗くなっていた。 「うわ、やっべぇ。」 飛び起きて顔を洗い、出掛ける支度をする。 着ていく服を少し考えたが、気が進まないことも手伝って、普段着のコットンシャツとジーンズ姿で、パーティー会場へ向かった。
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