添い寝男子と抱きしめ男子(1/2)

1/1
4人が本棚に入れています
本棚に追加
/4ページ

添い寝男子と抱きしめ男子(1/2)

   SE 時計のアラーム音 結奈「(背伸びして)うーん。朝だ」 奏「おはよう。いい夢見れた?」 結奈「お兄ちゃん! わわっ……」    SE 目覚まし時計が床に落ちる音 ガシャン 結奈「いたたた……ビックリするでしょ。子供じゃないんだから……ベッドで添い寝するのやめてよ!」 奏「恥ずかしがらなくてもいいでしょ」 結奈「……違うから! その閉じた目を開けて、ちゃんとこっち見て」 奏「(あくび)いい天気だし、あと10分だけ寝よう」 結奈「(溜息)お兄ちゃんといると、学校遅刻しちゃうよ」 奏「心配いらない。車で送ってあげる」 結奈「高校生とぐうたら美大生を一緒にしないで。 それに……お兄ちゃんのボロ車、目立つからいや」 奏「(体を起こす)んっしょ。こら、クラシックカーっていいなさい」 結奈「ちょっと! 髪の毛ぐちゃぐちゃにしないで。……ん?」    SE 時計の秒針の音 結奈「嘘! 8時過ぎてる」    SE 床を走る音    SE タンスを開ける音 結奈「遅刻だ、遅刻だよ。なんで目覚まし遅れてるの」 奏「(笑い声)」 結奈「まさか」 奏「ボロ車なら高校まで5分。どうする? 結奈のお願いなら、なんでも聞いてあげるよ」 結奈「こいつー!」 奏「なーに?」    SE 車の扉を閉める音 結奈「ありがとう。行ってくる」 奏「待って」 結奈「え?」 奏「制服のリボン曲がってる。僕の方、覗いてごらん」 結奈「リボン?」 奏「……はい。直った。気をつけて、行ってらっしゃい」    SE 車が発進する音 結奈(M)「私は、春日結奈。高校2年生。私を送ってくれた、古ーい車の持ち主が、春日奏。私のお兄ちゃん。といっても、血は繋がっていない。お母さんの再婚相手の息子さん。つまり義理の兄」    SE 学生たち『おはよー』の挨拶 結奈(M)「でも私は、実の兄弟みたいに思ってる。お兄ちゃんも、同じじゃないかな。小さい頃から一緒に育ってきて、まるで本当の妹みたいに優しくしてくれるから」 博美「おはよう。結奈、あんた車の中でキスしてなかった?」 結奈「博美!? してない、してない。運転手、お兄ちゃんだよ?」 博美「なーんだ。車に顔突っ込んだまま出てこないから、何事かと思ったわ」 結奈「勘違いだよ……」 博美「だって、結奈とお兄さんと仲よすぎ。毎日の送り迎えも欠かさないし」 結奈「(苦笑い)」 結奈(M)「私と兄は、本物の兄弟みたいに仲が良い」    SE 学生たちが談笑する声 結奈「(溜息)教室、ギリギリセーフ」 博美「余裕だって。まだ5分もあるでしょ。ほら。皆も遊んでるし」 結奈「そうだけど……」    SE サッカーボールが床をはねる音 博美「サッカーボール?」 結奈「(ボールを拾って)誰のだろう?」 男子生徒1「(歩いてくる)すまん。ボールが転がっちまった。悪いな」 結奈「(戸惑って)あっ……」    SE (回想)大量の蝉の声 男子生徒1「(訝しげに)どうしたんだ? こっちにボール投げて」 博美「結奈、固まってどうしたの?」 結奈「ボール……?」    SE (回想)蝉の声が大きくなる 明人「早く返してやれよ」 結奈「(ハッと気がついて)……え?」    SE ボールをキャッチする音。 明人「窓ガラス割ったら、先生うるさいぞ」 男子生徒1「了解、キャプテン! サンキューな」    SE 走り去る足音 結奈「神田くん……」 明人「ボーっとするな」 結奈「ご、ごめんね。ありがとう」 博美「結奈、大丈夫? ねえ、このハンカチで汗ふきなよ。真っ青だよ」 結奈「心配掛けてゴメン。慣れない人と、上手く話せなくて」 博美「アンタの人見知り……。箱入りだと、人が苦手になっちゃうのかしら」 明人「(言いかけて)春日……」 男子生徒2「(大声で)神田!」 博美「ん?」 明人「戻るわ」 博美「バイバイ」    SE 椅子を引く音 男子生徒2「神田、次のサッカー部の対抗試合、集合場所どこだっけ?」 明人「公園前。昨日、プリント渡したばっかだろ」 男子生徒3「なあ、神田。コーチに部活遅れるって謝っといて。オレ、補習でさ」 明人「……自業自得。自分で言えよ」 博美「神田ってさ……口うるさいわよね」 結奈「サッカー部の主将だもん。面倒見良いよね」 博美「まあね。でも女受けはいまいちだと思うわ。真面目すぎて、話しかけにくいし。冗談通じ無さそう」 結奈「博美ってば……(苦笑い)」 博美「さっきボール転がしてきたのも、サッカー部でしょ。さすが校内一の大所帯。フォローも大変ね」 結奈「神田くんはさ、好きなんだよ。そう言うの」 博美「なんか詳しいような口ぶりね」 結奈「(慌てて)ううん。何となくだよ」    SE (遠くで)男子生徒達の応援の声    SE (遠くで)サッカーボールを蹴る音 明人「(遠くで)しっかりボールキープ。確実に、ゴール入れるぞ!」 結奈「サッカー部、グラウンド練習頑張ってるな。もうすぐ試合だもんね。……よし、私も図書委員の仕事、しっかりやるぞ」    BGM 下校の音楽    SE 砂利を踏む音 結奈「もう夜の7時。さすがに下校時刻だと、体育館裏には誰もいないね。……でも、ちょうどいいかも」    SE スマホのバイブ音 結奈「あれ? お兄ちゃんからライン来てる。1、2……10通も! 図書室で電源落としてたから気づかなかった。いつもより帰るの遅いし、心配してるかも」    SE 自転車のブレーキ音    SE 自転車のサイドスタンドを出す 明人「春日! 悪い、部活が伸びちゃって。試合前で雑用多くてさ」 結奈「気にしないで。明人君、それより名前」 明人「ああ、そうだな。結奈……手かして」 結奈「手? はい」 明人「止まったみたいだな。朝はあんなに震えてたから」 結奈「心配してくれたんだね。明人君が助けてくれたから大丈夫。自分でもどうにかしようと思ってるんだけど」 明人「いいんだ。このままで」 結奈「え?」 明人「……いや。俺も、奏さんから結奈のこと気にするように言われてるし」 結奈「おにいちゃん?……あ!」 明人「どうした?」 結奈「お兄ちゃんから連絡あったの。きっと私たちのこと心配してるよ」 明人「えっ、連絡?! マズいな。早く帰ろうぜ」   SE 自動車のサイドスタンドを外す 明人「乗れよ」 結奈「よいしょっと。オッケーだよ」 明人「飛ばすぞ。捕まってろ」 結奈「うん」   SE 自転車のベル 結奈(M)「彼は神田明人。私と兄の幼馴染。小さい頃は、毎日、真っ暗になるまで三人一緒に公園で遊んでたらしい」 明人「(笑い声)」 結奈「明人君?」 明人「奏さんが怒ってるとさ、ガキの頃を思い出すな」 結奈「子供の頃?」 明人「ああ、公園のかくれんぼ。鬼の奏さん置いて、俺たち、別の場所に遊びに行ったんだよ」 結奈「そうだっけ」 明人「夕方、公園戻ったら、あの人ずっと結奈のこと探してた。声掛けた時には、もう目が据わっててカンカンに怒られたよ」 結奈「あまり思い出せないけど。昔から変わらないんだね」 明人「……ああ。そうだ。どうせなら、このまま二人で寄り道して帰るか」 結奈「もう。お兄ちゃん、探しにきちゃうよ」 明人「(笑い声)間違いない」 結奈(M)「高校になってから、私と明人君はクラスで話すことはほとんどない。明人君はサッカー部主将で目立つし、私は注目されるのが苦手だから、気を使ってくれてるんだと思う。でも、昔から変わらないのが下校の時間。ずっと、二人で帰ってる」   SE 自転車のブレーキ音 明人「到着っと……先行ってくれ」 結奈「うん。りょうかい」   SE 扉が開く 結奈「ただい……(驚愕)お兄ちゃん?! 玄関で仁王立ちしてどうしたの」 奏「(不機嫌そう)おかえり」 明人「結奈、鞄忘れて……うわっ、奏さん!」 奏「遅い。明人が付いてるのになにしてるのかな?」 結奈「今日、図書委員の仕事があったの。それで遅くなっちゃって」 奏「委員会? それにしてものんびりだね? 二人で寄り道でもしてたの?」 結奈「よ、寄り道なんて……」 明人「(遮って)ごめんって。実はサッカー部、試合前でさ。結奈に待ってもらってたんだ」 奏「そうなんだ。明人が忙しいなら、僕が迎え替わろうか?」 結奈「お兄ちゃん?!」 明人「待って。オレが、キチンと責任持って送るから。な?」 結奈「そ、そうだよ。私も今は委員会忙しいから、ちょうどいいの。全然待たないし!」 奏「結奈が言うなら、様子見るけど」 結奈(M)「2人とも、私の人見知りを気にして色々世話を焼いてくれる。心配しすぎて、いつの間にか喧嘩してることも多いんだよね。反省。私が、頼りないからだよね。……もっとしっかりしなきゃ!」
/4ページ

最初のコメントを投稿しよう!