抱きしめ男子エンド

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抱きしめ男子エンド

  SE 生徒たちが談笑する声   SE 足音 女子学生1「おはよう」 女子学生2「おはよう」   SE 教室の引き戸が開く音   SE 生徒たちが談笑する声が止まる 博美「(バツが悪そうに)あ、きた」 結奈「クラスの雰囲気、重くない? どうかしたの?」 博美「結奈、あんたよ。変なうわさが立ってるのよ」 結奈「え、うわさ……?」 博美「ほら見て。前の席に立って、女子と話してる先輩」 結奈「(気まずそうに)笹木さん」 博美「朝から、クラスで結奈のこと聞きまわってるの」 結奈「私のことを?」   SE 足音が近づいてくる 笹木「春日さん。サッカー部でも、知っている人はいなかった」 結奈「何……ですか?」 笹木「君と神田が付き合ってるって話、ガセでしょ?」 結奈「(驚いて)……それは」 博美「本当なの?」   SE 生徒たちのざわめき 明人「事実です」 主「神田君?!」 笹木「信じられないな。春日さんの口から真実を聞くまでは」 明人「な。結奈、そうだよな」 結奈「あ、あの……」 結奈(M)「怖い。目の前にいる男の人が怖い。体が動かない。息が苦しい。そんなときだった。明人君は私の肩に優しく手を乗せた。私を見つめる、まっすぐなまなざし。私は、また彼にすがってしまった」 結奈「本当です」 笹木「(悔しそうに)……っ」 明人「そういうことなんで、諦めてください」 結奈「……ごめんなさい」 結奈(M)「明人君に2度もウソをつかせて、私は何をやっているんだろう」   SE チョークが黒板をたたく 教師「19世紀初頭の外国文化は……」 結奈「(溜息)」 結奈(M)「明人君は、子供の頃から、気がつくと隣にいてくれた。お兄ちゃんとも違う、そばにいるととても安心できる人」 教師「神田君。次を読んで」 明人「はい」   SE 椅子を引く音 明人「ヨーロッパで起こった近代化は周辺諸国にも大きな影響を与え……」 結奈(M)「明人君とはずっと一緒にいたい。だから、このままじゃいけない。一方的に彼に頼り切ってるようでは駄目なんだ」   BGM 下校の音楽   SE 自転車のサイドスタンドを立てる 明人「帰ろうか」 結奈「待って。……ごめんなさい!」 明人「急に頭下げて、どうしたんだよ」 結奈「私のせいで、笹木さんにあんな事言って。明人君に迷惑かけてばかりで」 明人「気にするな」 結奈「(否定)ううん。私、先輩にも謝ってきたの」 明人「……まさか」 結奈「明人くんは嘘なんかつく人じゃないのに。(肩を掴まれる)え、なに?」 明人「違うんだよ。俺がやりたくてやったことなんだ!」 結奈「でも」 明人「先輩に告白されてる結奈を見て、冷静でいられなくて。俺のものって言えば、誰も手を出さないと思った」 結奈「……それって」 明人「小さい頃からずっと不安だった。あの日みたいに結奈から目を離したら、またどこかに行ってしまいそうで……でも、それだって、俺は……結奈のことがずっと大切だったから」 結奈「明人くん?」 明人「好きなんだ。結奈のことがずっと」 結奈(M)「明人君の両腕が、私の体を包みこんだ。とっても暖かい場所。昔から知ってる、安心する私の大切な……」 明人「ずっと結奈のこと、抱きしめていたい。そうすれば、二度とオレから離れられないだろ」 結奈(M)「明人君の瞳の奥に影が見えた。きっと彼は不安なんだ。でも……」 結奈「心配しないで。これからは、私が明人君のこと、いっぱい抱きしめるよ。私が離さない」 明人「ああ、その言葉忘れないで……」 結奈と明人「(笑いあう)」 END
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