消えた推し

3/6
前へ
/6ページ
次へ
 友人は何となく顔を思い浮かべると、双眼鏡を通してステージ上を見渡した。 「あれじゃないか? ほら、右から3番目の黒髪ロング」 「違う! あれは恐らく“仁手日(にてひ)ナル”だ!」 「じゃあ、左から6番目の黒髪ロングの後ろにいるのか?」 「全然違う! あれは多分“有木田莉奈(ありきたりな)”だ! お前の目は節穴か? ってかメンバーの顔も名前も分からないとかファンとしてあるまじき失態だぞ!」  お前も『恐らく』とか『多分』とか言ってんじゃん。友人は心の中で呟き興奮気味の男に提案した。 「まあ落ち着け。とりあえずメンバー全員いるか確認してみようじゃないか」 「む……そうだな」  二人はステージ上のアイドル達を端から順に数え始めた。 「28、29、30……あれ? あの子って数えたっけ?」  しかしパフォーマンス中であるがため、当然アイドル達はジッとしてくれるわけがない。 「46、47、48……ダメだ。こうも動いてちゃまともに数えられん……」
/6ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加