満月

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満月

「……じゃ、行って来ます。あとよろしくお願いします」 「はい。気をつけて。……講習会、今年は一人で寂しいね」  国語科トップのオヤジが言った。 「セクハラ」 「君たちいいコンビだったから、そう思っただけだよ。持ち帰った情報もうまく活用してくれてたし」  ……墓穴掘った。 「……先生、暇なら良かったら一緒に行かれますか?」 「僕はいいよ。この歳になると都内出るのは面倒で」  普段乗ることのない、真っ昼間の電車に揺られて、だんだん車窓は都会の景色になって――――かくん、と眠気に襲われた時、スマホが鳴った。  長い鳴動に、学校からの連絡かと急いで出ようとすると、画面には思いもよらない名前が出ていた。
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