7

4/4
35人が本棚に入れています
本棚に追加
/56ページ
 拓人は研究者らしく、スケールできっちり計る。メモも取っている。  それから、梅をざぶっと洗う。 「水気をしっかりふかないと、腐るからね」  それは大変だとばかりに、ていねいにふいている。  そしてへたも1つ1つ取る。  びんに梅と氷砂糖を入れ、ホワイトリカーを注ぐ。  きっちりふたを閉めた。 「それから?」 「これでおしまいよ」 「これだけ?」  確認のために、砂糖の袋のレシピを読む。 「6か月で出来上がりますが、1年から3年経過したものが、色、味、香りとも素晴らしくなります。だって」 「あとは時間がおいしくしてくれるのか」 「ふふ、楽しみ!」    それから拓人は、毎日確かめるのが日課になった。  氷砂糖はゆっくりと溶け、見る度に琥珀色が濃くなってきている。  心なしか、とろりとしてきたようだ。  びんをゆっくり揺すると、レロレロとした美しい螺旋模様がひろがる。 「きれいね、まだかな」 「まだまだ」  時に、拓人は写真まで撮り、しばらく眺める。  そしてまたそっと元に戻すのだった。
/56ページ

最初のコメントを投稿しよう!