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拓人は研究者らしく、スケールできっちり計る。メモも取っている。
それから、梅をざぶっと洗う。
「水気をしっかりふかないと、腐るからね」
それは大変だとばかりに、ていねいにふいている。
そしてへたも1つ1つ取る。
びんに梅と氷砂糖を入れ、ホワイトリカーを注ぐ。
きっちりふたを閉めた。
「それから?」
「これでおしまいよ」
「これだけ?」
確認のために、砂糖の袋のレシピを読む。
「6か月で出来上がりますが、1年から3年経過したものが、色、味、香りとも素晴らしくなります。だって」
「あとは時間がおいしくしてくれるのか」
「ふふ、楽しみ!」
それから拓人は、毎日確かめるのが日課になった。
氷砂糖はゆっくりと溶け、見る度に琥珀色が濃くなってきている。
心なしか、とろりとしてきたようだ。
びんをゆっくり揺すると、レロレロとした美しい螺旋模様がひろがる。
「きれいね、まだかな」
「まだまだ」
時に、拓人は写真まで撮り、しばらく眺める。
そしてまたそっと元に戻すのだった。
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