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立春が過ぎると、先輩の姿を思い浮かべるだけで、知らずに涙がこぼれるようになった。
学校に通えた感謝状を先輩に渡したいと思った。
卒業式の日、月ちゃんにそのことを伝えた。
「勇気を持てたのは、月ちゃんのおかげだよ」
「えー。1年もかかったけどね」
月ちゃんはふふんと笑う。
玄関前は、たくさんの人であふれ返っていた。
やっぱりやめておこうかと、尻込みしかかった。
「ほら、先輩行っちゃうよ? さあ、行ってこい!」
月ちゃんは、ぱあんと私の背中をたたいた。
私は、深呼吸をすると、先輩に向かって走り出す。
手に手紙を握りしめて……。
先輩の後ろ姿を見失いそうになりながら、追いかけた。
「あ……と、時松先輩!」
先輩は立ち止まり、こちらを振り向いた。
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