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 出来上がった回鍋肉の味見をする。これは、フライパンに入れたままでいい。  サラダはラップをかけて、冷蔵庫の中に入れる。  きっと、私が帰る時間と同じくらいになるだろうなと思いつつ、今夜のメニューをホワイトボードに書いておく。  戸締り、火の元を確認すると、ビニールバッグを持って、外に出た。  毎週水曜日は近くのスイミング教室に通っている。  たまたま拓人とこのあたりを歩いていた時のことだ。  運動は苦手だけど、水泳は好きだと話した。 「でもクロールの息継ぎはできないの」 「じゃあ、ここに通ってみたら?」  拓人はこともなげに言った。 「いいの?」 「別に夕飯の用意さえしてくれたら、かまわないよ」  子どもの頃でさえ、習ったことなどなかったのに、大人になってから通うだなんて。  もしかしたら、子どもができるまでの今の間は、自分の時間を充実させればいいのかも、と嬉しくなった。  夜は、大人向けの教室が開設されていた。  水曜日に通うことに決め、仕事を1時間早く上がらせてもらうよう、お願いした。  私がスイミングから帰る頃に、拓人も帰ってくる。 「今日は何を練習したの?」  夕食を食べながら、拓人が聞く。  私はさっきまでしていたことを身振りも交えながら説明する。  それをおもしろそうに聞いてくれる。  でも、食べ終わる頃には、私はバッテリーが切れたように、急激に眠くなってしまう。  すると、拓人が食器を洗ってくれる。  私の好きなことをしてるのに、申し訳ないなと思って、後でするから置いておいてと言うと、自分も家事をしないとね、と言いながら、拓人は手早く片づける。  うつらうつらしながら、水音を聞く。 「運動も大事だしね」  拓人がそう言ってくれたのが嬉しくて、プールに誘ってみると、やる気を出した。  それで時々、2人で市民プールに泳ぎに行くようになった。
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