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1.砂漠の風
少年は村のはずれに近い、砂漠からの風が一番初めに届く家に、祖父母と弟と暮らしていた。
祖父は砂漠を渡る商人たちのための「案内人」。彼
らの旅に同行して砂漠の道を案内する。少年の父親も案内人だったが、何年か前に大商人の行列を案内するために村を出てそのまま戻ってこなかった。
商人の娘と結婚して街の大きな家で暮らしているんだ、など噂を口にする人もいた。父親がいなくなったのはさみしかったけれど、辛くはなかった。祖父母はいつだって少年のことを思ってくれていたし、弟もいる。
何よりも少年はこの砂漠の中の小さな村を愛していた。
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