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「ちょっとまて、しかもこの写真の背景はラブホなんだよな?」
「はい。いかがわしい通りですね」
「……入る前なのか? 出た後なのか?」
「入る前、です。この二人はホテルの入口あたりをうろついたり覗いたりして、結局入らずそのまま帰っていったので」
「そのまま帰った!? なんで!?」
見かけによらず勇者一筋で恋愛経験のない戦士には意味がわからない。男女がいくつもホテルを覗いて、ホテルに入らずに帰ることなんてありえるのだろうか。それも魔法使いにとっては勇者は探し求めていた相手だ。逆にここまで来ておいて手近なホテルに連れ込まない理由がわからない。
「勇者さんが怖気づいたのかもしれません。もともと彼は誠実な人柄ですし、十八歳未満の魔法使いさんと関係を持つわけにはいかなかったのではないでしょうか」
「ああ、そっか、魔法使いってこっちじゃまだ子供だもんな。それにこっちの世界じゃ大人が子供とエロい事したらいけないんだっけ」
戦士と僧侶は、魔法使いの年齢と勇者の良識に救われた。魔法使いが大人だったら、勇者が流されたりしたら終わりだ。
「この写真のときにはできていないにしろ、こんなの許せないな。次の定例会で魔法使いをシメるか?」
「やめておきましょう。あの子はふわふわととぼけるに決まっています。それに勇者さんとどんな関係かは知りませんが、告げ口されても困ります」
「それもそうだな。ああ、くそっ、でも怒りがおさまらねぇ!」
戦士は怒りをおさめるためにも冷たいカフェラテを飲み干した。魔法使いからは裏切られていたし、勇者が見つかったのに近付けない。とくに二人は魔法使いを敵視していた。彼女達は二十五歳。そして魔法使いは十六歳。単純に若さが憎いし、頼りなさげなのに要領のいいところもあって侮れない。
「だいたいさー、なんで魔法使いだけ若いんだよ。肌とかぴちぴちさせやがって」
「若いのは、おそらく前世での私達の死因が原因ではないでしょうか」
「しいん?」
音も立てずにコーヒーを飲む僧侶に戦士は聞き返した。彼女達は魔王を倒した後、皆悲惨な死を迎えた。だからこそ魔王退治するよう指示した女神も責任感から転生させたのだ。
確認するように今まで聞いた話を一つずつ戦士は語る。
「たしか、勇者は故郷の村に帰ってから毒殺されたんだっけ?」
「ええ、魔王を倒したお祝いの席での事です。ご馳走の中に毒を盛られ、勇者さんは死んでしまいました。私がいたら助けられたのに、その時の私達は報告のため一時故郷に帰っていましたから」
めったに感情を顕にしない僧侶が、瞳を潤ませた。魔王を倒した凱旋後、パーティが解散してからの勇者の毒殺。それは国ぐるみの計画的なものだった。
解毒のできる僧侶がいればきっと勇者を助けられただろう。しかし彼女は出身である教会に報告していたためいなかった。
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