SOME DAY

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夜が好きだ。どこまでも静かで見たくないものは闇が隠してくれて。俺を少しだけ素直にさせてくれる。 昔のように後先考えず、玉無しだろうが無鉄砲に突っ込んでいけた時とはだいぶ変わってしまったけれど。 今でもやっぱり夜が好きだ。 叶わない恋なんかじゃなかったよ。俺らが出会った時間も場所も今で丁度だった。あんたと出会ったのも今で丁度なんだ。 わかってる。俺が知ってる。 あの日、満月が2日過ぎたあの晩。あの時間に偶然俺も空を見てたんだ。仕事上がりでタバコ吸ってた。見事な真っ黒な雲が風に流されて月を時折隠しながら流れていって。月の美しさを言葉に変えるなんざ到底俺には出来ねぇけど。 綺麗だったよ、すげぇ綺麗だった。そして静かで、心ん中もその一瞬だけは空っぽになって。けど、いっぱいに何かで満たされてて。 毎日同じ日の光を受けて生きているはずなのに、あの時間だけは特別だった。なんてことねぇ夜。 けど、神聖だったあの一瞬。 結局俺の帰りが遅くて話もできずに翌朝を迎えたんすけどね。 俺んとこで降ってた雨がそっちに行って。同じ雨雲かもしれん、とか言いながら大口あけて雨を飲むような奴。 いや、俺、飲んでねぇからとか馬鹿言って。 雨一つ、雲一つ、月一つ。一つ一つ大事にできたよ。だから叶わなかった恋じゃねぇ。恋じゃない、あいつがくれたのは確実に愛だった。 だから俺は進めるんです。あんたを見つけたその時に感じたあの感じは錯覚じゃねぇ。 分かってるけどあんたじゃ俺は荷が重い。 イラついた? じゃぁさ、いつか月明りの下で俺の事考えて。俺に届いたら、そしたら帰って来るよあんたんとこに。 準備ができるまで待っててやるし。 それまでは SOME DAY FIN
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