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田田田さん
淳平と約束した日曜日、目が覚めたら枕元に見覚えのない紙袋が置いてあった。
寝起きってのもあって、ざっと10秒は固まった。
「えと……?なんだっけ……」
寝っ転がったまま手を伸ばして、持ち手の所にセロテープでくっついてる小さな包みを剥がして近くに持ってくると、マジックで「From田田田」って書いてある。
「た、た、た?たたた?」
でも筆跡は明らかにヒロくんで。悪戯っぽく笑う顔を思い浮かべながら考えて、じきに気づいた。
「ああ!さんた、か~!」
包みを開けると、中に入ってたのはストラップ。紐の先にぶら下がった見たことないキャラクター。カラフルなクッキーモンスターみたいな……
「見ようによっちゃあ、カワイイかな?」
なんでもいいの。ヒロくんが俺のためにくれたのが嬉しくて胸がほわほわする。
自分でも笑ってるのが分かる顔のまま今度は体を起こして大きい紙袋の中を覗いたら、中には薄くて白い紙に包まれた何か。
ああ、プレゼントってほんとに嬉しいよね。
物がっていうより、その人が俺を思ってくれた時間があるってことが。
中身を取り出すと軽くて柔らかな感触がして、かさかさと音を立てながら白い紙を開いたら、中から出てきたのはストール。
しかもめちゃくちゃ気持ちいい手触り……ぴらっと付いてたタグを見たら、カシミア100%って!!
「うわぁ~……」
なんか言葉に詰まって……俺はそれを胸に抱いたままスリッパも履かずに部屋を出て、ヒロくんの部屋のドアをノックした。
「ヒロくん、ヒロくん!!」
中からは、あぁ~?って面倒くさそうな返事が返ってくるけど、こいつ絶対俺がなんで来たか分かってるからね!
もう、ドアを開けるなり机で勉強してたヒロくんの傍に行って「ありがとう!!」って!!
「これすっごい気持ちいい!高かったでしょ……?ありがとね……大事にするからね!!」
言いながらストールを広げて首に巻いて、ヒロくんに見せた。
「ま、いいんじゃないですか。お似合いですよ」
「うふふふ…うん」
「でもそれはオマケだから。もう一個あったでしょ。あれよ、メインは」
「ええ~?ふふふ、あれも使うよ!ありがとう、さんたさん」
ヒロくんは照れ隠しに口を曲げて笑って、じゃあって机に向き直ると、俺がお邪魔しましたって部屋を出てドアを閉める瞬間、誕生日オメデトって小さい声で言った。
ほんとに……可愛い照れ屋さん。
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