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時間を戻して
先週の日曜日……部屋探しをした帰りのファミレスで話をした後から、ヒロくんはなんだか前のヒロくんに戻ったみたいに自然になった。
このまま暮らしていけるんじゃない?って何度も思ったよ。
でもそう見えるのは俺の願望のフィルターがかかってるからだってのも分かってた。
ヒロくんは今、俺のために普通にしてくれてる。きっと『一つ屋根の下に暮らすのもあとちょっと』だから。
俺が言うのもヘンなんだけど……御厨さんと付き合ってる今もヒロくんの中には俺を好きな気持ちが残ってて、近くにいたらふっ切れないんだろうなって。
だから、出てく。
それはヒロくんが決めたことで、もう決まっちゃったことで……俺は何も言えない。
だから俺、笑ってようって思った。
ヒロくんが二人の間の空気をただのいとこ同士だったあの頃に戻そうとしてくれてるから、俺も何も知らなかった時そうだったように、楽しく過ごそうって。
意気込みだけはね!
すぐに『もうじきいなくなっちゃうんだ……』って思い出して悲しくなるんだけど。
「あ、俺もプレゼント。夜でいっか。ってか、今日ヒロくん夜いるのかな……」
自分の部屋のドアノブに手を掛けたまま考えて、でも今勉強の邪魔したばっかりだから戻って訊くのもなぁって思って……結局夜、会えたら渡そうって決めた。
もしかしたら御厨さんとデートかもしんないけど。
ヒロくんと御厨さんがデート。
想像つかない。男同士で何するんだろう……
俺だって大学時代はね!これでも結構モテたんだから!
あんま考えずにカワイイなぁって付き合って失敗もしたけど、クリスマスイブったらそりゃあ頑張っちゃったよね。
バイト代全部つぎ込んでさぁ、食事とプレゼントとホテルと……
だから相手が女の子だったら楽にイメージ出来るんだけど、ヒロくんと御厨さん……
二人がいい雰囲気になっちゃったりすんの?
御厨さんイケメンだからなぁ……それでこう、ヒロくんと見つめ合って……
…… …… ……で?
や。考えてどうすんの。いろいろあるんだって。男同士でも。
いろいろってどんな……って考えない、考えない!!
俺はストールに熱くなった顔を埋めて何とも言えない気持ちをうやむやにして、部屋に戻った。
さて、もう少しだけゆっくりしたら、出かける準備をしなきゃ。
淳平と駅で待ち合わせてCOFFEEじゅんぺいで忘年会企画進行会議!お店を見た時の淳平の反応がちょっと楽しみ。
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