ホットミルク

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ホットミルク

最初に来た時とは違って七割方席の埋まってる店内を進んで、俺たちはカウンター席に並んで座った。 あの時と同じ懐かしい空気の漂う店内に淳平の目がわくわくしてるのを隠してないのがなんか嬉しくて、淳平の目を追って一緒に店のあちこちに目を凝らした。 「ちょーいいじゃん。すげー好き、こういう雰囲気」 首元を覆ってたマフラーを外しながら淳平がこっちを向いて微笑んだ。 俺の店じゃないんだけどなんか自慢!そうでしょー!って! 「ね!なんか俺ばーちゃんちの応接間の匂い、思い出すんだよね」 「ははは 分かる分かる」 なんて俺と淳平が話してたら目の前にお水の入ったレトロなグラスが置かれて、マスターが「何にする?」って微笑みかけてきた。 立てかけられてるメニュー表を2人で見て、俺が「ホット」ってマスターに伝えたら、淳平が暫く悩んだ挙句に言ったのが「ホットミルク」で、俺……思わず顔を見ちゃった。 「コーヒー苦手だったっけ?」 「いや、ちょい気分的に」 笑っちゃだめだ、と思っても口がムズムズする……だって……この外見でホットミルクとか…… 「ぷ…ぷぷ……カワイイ…淳平……」 「うるせーな。好きなんだからいいだろ」 淳平がちょっと照れたように口をとがらせて言う。 「うちの、マシュマロ入ってるけどいい?苦手なら入れないけど」 マスターが豆を準備しながら振り向いた。 「あ、大丈夫です」 ホットミルクにマシュマロ……に、淳平……ぶふふ…… 「お前……全部顔に出てんだよッ」 「いてっごめんごめんっははは」 淳平に後頭部を叩かれながら笑ってたけど、実は内面的には結構似合うって思ってた。 幼くなる笑顔とか、ゆるキャラやぬいぐるみが好きなとことか、なんか可愛いとこがあるからさ。 それから、ばーちゃんちの応接間の雰囲気に引っ張られて子供の頃の懐かし話で盛り上がった。 流行ったお菓子、おもちゃ、テレビ番組……同い年だから話がぴったり合うの。 「はい、お待たせ」 俺たちの間に柔らかく割り込んだマスターが置いてくれた湯気立ち上るカップからは香ばしいコーヒーの香り。 「お、かわいい」 低い声で小さく言った淳平のカップの中には、クリーミーな白いミルクにハート型のマシュマロが2つ浮かんでた。
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