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目撃
今日はね、いわゆる接待というヤツで。
オマケにちょっと……いやかなりクセのある得意先のご要望はゲイバー。
『あぁぁ…どの店がいいのか分かんない…』
泣きごと言いながら同僚の淳平に付き合ってもらって事前に下見に行って、いわゆるゲイの人じゃなくても案外楽しいところなんだって分かって安心はしてたんだけど、やっぱね。
でも下見しただけあってお店の人にも覚えてもらってたし、すっごいサービスしてくれて接待は大成功!
「今後ともよろしく頼むよ。いやぁほんとに楽しかった」
なんて……ほくほくでタクシーに乗り込んでくのを見送った。
車が遠ざかっていくのを下げた頭の向こうに感じながら、よし終わった!って気分で顔を上げて、歩き出した足取りは軽いよ?だって仕事がうまくいった後だから!
週末の歓楽街は10時を過ぎてもまだまだ賑やかで、通りのあちこちには酔っ払いも目立つ。
そんな中、客引きの声からさりげなく体を遠ざけながら駅への道を急いでた俺は、自分でもすごいと思うんだけどね……見つけちゃったの。
三々五々行き交う通行人の向こうに、ヒロくんの顔!!
うわ、ヒロくんってこの辺にも遊びに来てんの!?ってカルチャーショックだったのに、その後少しばらけた人の波の間から見えたものに心臓がどきんって跳ねた。
少し猫背のヒロくんが話をしてる相手はスーツ姿のサラリーマン。顔はよく見えないけど俺と同じくらいの年代っぽいヤツで、何に驚いたって、二人が入って行った先が……ホテルだったから……
え……
えっと……
ん……?
んんん……?
いやいやいや……
落ち着け、俺。ゲイバーに行ったばっかだから、そっちに頭が寄ってんだってきっと。
うん。だって、ヒロくんはそんなこと一言も……
ふ、普通は言わないもんか……
でもっでもっ普通にタイプの女の子の話とかしたのに……!
けどヒロくんがそうじゃないとしたら、他に何の用事で男とこんな時間にホテルに……
もしかして……脅されてるとか……?
たちの悪い大人に弱みを握られて……それで、体の関係を強要されてるとか……!!
ヒロくんの様子がおかしいのは、そのせいじゃないの……!?
一度考え出したらそうとしか思えなくて、今夜か……明日にはヒロくんから聞き出さなきゃ……!!って思いで頭がいっぱいになった。
だって、誰にも言えないで苦しんでるなら、そんなの絶対絶対ほっとけないって……考えただけで涙が出て来たから……!
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