勘違い

1/1
373人が本棚に入れています
本棚に追加
/192ページ

勘違い

あれ……?じゃあ、あの人は本当に友達?あ、友達でも利用可のラブホテルってあるじゃん!あれだったの!? 「ごめん俺、すっげぇ勘違いだったかも……ヒロくんがサラリーマンっぽい人とホテルに入ってったから……だから、あいつになんか弱み握られて脅されてるのかなって、そうなら何か俺に出来ることがないかなって……そう思って。あの人友達だったんだ?」 この時サラッと言えたのは、俺の中の答えが『ヒロくんとあいつは友達で、そーゆー目的じゃなしにラブホを利用した』に決まったから。 それなのに、今度は俯いて鼻の横をぽりぽり掻いたヒロくんから返事が返って来なくて。 「……ヒロくん?」 「すごいとこ見られるよね。すっごい確率だよ。そういうのを引くのがアンタだよね。知ってたけど。まぁ確かに、あの人は友達っちゃ友達だよ」 「あ、やっぱり……?俺、友達同士でラブホとか使ったことないし、最近ヒロくんが変かもって思ってたから勘違いしちゃって……えへへ……」 なんか早とちりが恥ずかしくって照れ笑いしたらヒロくんが含みのある目線で俺のこと見ててさ。 「勘違い、ね」 「ん?」 「いえ、なんでもありませんよ、オニイチャン。そういうわけで私に悩みは有りませんし心配ご無用です。様子が変って、なんでそう思ったのよ」 立ち上がったヒロくんが勉強机の脇に身をかがめて積んであった、おそらくは俺のジャンプをどさっと数冊こっちに手渡しながら訊いてきた。 「だって夜も全然一緒に食べれないし……土日はお出かけできないし……」 俺が寂しい気持ちを訴えたら、ヒロくんたら大爆笑してさ! 「新婚の奥さんかっつーの!!晩飯食えなくなったのはバイト増やしたからだし、土日は平日の夜出来ないことをするのに忙しいのよ。寂しいのは分かるけど、我慢しなさいね」 なんか、その言い方がいつもより突き放してて…… もしかして今までも、俺が気づかなかっただけで構われるのがうっとうしかったのかな、とか考えちゃったらすっごい悲しくなって……笑って返事をしようと思うのにうまく笑顔が作れなかった。 「何よ……冗談でしょ……」 「あ、うん……冗談、だよね……」 渡された漫画をヨッと揺すって、俺は涙が零れちゃう前に帰ろうと「何もなかったんならいいの。ごめんね……」って体の向きを変えた。 そしたら後ろからぐっと肩を掴まれて、びっくりした拍子に漫画が2冊、足元に落ちた。
/192ページ

最初のコメントを投稿しよう!