いなくなった彼女

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失意の中、僕は何とか立ち直った。 今回の件で僕は多くの夢を失ったが、でもALSを治したいと言う僕の夢はまだ叶える事が出来る筈だった。 僕には水品さん以外にも治療を待っている多くの患者さんが居る。その患者さんの為にも僕は新薬の研究を止める訳には行かなかった。 僕の開発したHMR―2が何故、水品さんに効かなかったか? その原因が分かってきた。マウスには遺伝性の原因因子(SOD1)を移植していた。だから遺伝性ALSにしかHMR―2は効かないと言う事だ。日本では殆どのALS患者が非遺伝性だ。水品さんもそうだった。だから多くのALS患者さんを治癒する為には非遺伝性のALSに対応する新薬開発が必要だ。一方で裏を返せば、HMR―2は稀に発生する遺伝性のALSの患者さんには効果がある筈だった。しかし帝国大学には遺伝性のALS患者の方は居らず、僕はHMR―2の臨床開発を一旦中止し、非遺伝性ALSに対応する新薬にHMR―3と言う名前を付けて開発に没頭した。
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