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「ALSは様々な部位が麻痺をしていく病気です。最終的には球麻痺、つまり延髄が麻痺して呼吸が出来なくなり死に至ります。重症度五まで達した患者さんの平均余命は半年程です。しかし『ラジカット』で、少し時間を延長出来ると思います」
「そうですか・・」
と彼女は不安そうな顔で肩を落とした。
「水品さん。一つ朗報が有ります。帝国大学では画期的なALSの治療薬を開発しています。近々、その薬は臨床実験の段階に入ります。その薬が完成すればお父さんを治療出来る可能性があります」
彼女は顔を上げると驚いた様に僕を見つめた。
「まだ、お約束はできませんが、僕はこの新薬の開発に全力を注いでいます。何とかお父さんや、他のALSの患者さんを助けたくて・・」
その瞬間、泣き顔だった彼女の顔が笑顔に包まれた。
「先生、宜しくお願いします。少しでも父が回復する望みがあるなら・・ まだ私の花嫁姿を見せる事が出来るなら・・。その薬に掛けてみたいです!」
陽葵は、それから毎日、水品さんの病室を訪れて、そして僕の診察室にやって来ては、自分が勉強したALSの知識から僕に様々な質問を投げ掛けて来た。
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