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ALSの医師に
僕は大森陽翔。医師を目指していた僕は帝国大学医学部に入学し、筋萎縮性側索硬化症(ALS)が専門の大泉教授の研究室に入った。そこで様々なALSの患者さんに出会い、不治の病であるALSと前向きに闘っている彼等に僕は大きく鼓舞された。そして三年から五年の余命を一生懸命生き抜き天国に旅立って行く彼等を見て、ALSの治療薬の開発を生涯の仕事にする事を誓った。
医学部を卒業し二年間の研修医期間を終了した僕は、大泉教授が部長を務める脳神経内科に配属された。そして引き続き、ALSの患者さんの治療とALS新薬の開発を進めていた。
その患者さんに会ったのは僕が脳神経内科に来て二年目の冬だった。
水品光一さんというその患者さんは五二歳。既にALSの発症から四年が経過し、先週、横浜の病院からALSの高度医療が受けられる帝国大学病院へ転院して来た。既に四肢の運動障害、構音(発音)障害、嚥下障害、呼吸障害が発生しており、胃瘻での栄養摂取、人工呼吸器による呼吸補助を行なっていた。そして会話は唯一自分の意志で動かせる眼球を使って、パソコン上の文字を選び行なっていた。症状の進行を抑える為の投薬は最近承認された『ラジカット』の点滴を今週から開始しており、運動ニューロンの保護により症状は安定していた。
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