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九章:強欲
ーーサンニア、ラリアンクス家、廊下ーー
「メレミアに食い物を?」
サンニアのラリアンクス家で[シェス・ラックス]は[シロハ]と[セリハ]からある話を聞いていた。
「そう! メレミア姉さんにも美味しい物を食べてもらおうと思って!」
「……って言っても、メレミアの奴は俺と同じ疑似覚醒者で、その弊害はお前らも知ってるだろ? アイツの場合は食べ物が食べられないって」
「分かってます。だから私たちなりにメレミアさんへ美味しい物をって思ったんです」
見上げながら訴える二人にシェスは腕を組んで考え込む。
「まあ、お前らメレミアに色々と世話になってるからなぁ。何か力になりたいってのは分からなくはねぇけど……」
シロハは「そうなの!」と肯定し、セリハも頷く。そこでシェスは一つ提案した。
「だったらクルナ先生にも相談するか。俺たちだけだと分からねぇことも多いだろうし」
「もう話してるよ? 後はシェスかファミリアスに良いよって言ってもらうだけだったの!」
シェスは呆気に取られたように「なんだそれ……」と口にする。
第二次宇宙反乱戦争が終結してから二年が経過し、世界は戦いの傷を癒やそうと躍起になっていた。
[ファミリアス・ラリアンクス]が世界連合軍の代表となり、宇宙に住まう人々とも対話の場が設けられ、平和への道を歩んでいる世界でシェスは一機のファクターの開発を担当していた。
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