九章:強欲

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「シェスも最近ずっと軍の仕事ばっかりで遊んでくれないから!」 「結局それか」  シェスの言葉にもシロハはめげずに「遊んでよー!」と騒ぐ。セリハも負けじとずいっと迫るが、シェスはため息を吐いた。 「俺だって暇じゃねぇんだ。色々と仕事があるんだよ」 「仕事仕事って、私たちと仕事、どっちが大事なの!」 「仕事に決まってんだろ! お前らももう子どもじゃないんだから、少しは分かれ!」  シロハが「遊んでー!」とせがんでいると「何騒いでるの?」と[キャニー・リライン]が声をかけてきた。 「あ、キャニー姐さん。いや、シロハとセリハが遊べって言ってきて。俺も例のファクターの開発してるから遊べないんスけど」 「ちょっとぐらいなら良いんじゃないの? あのファクターって月にあるし、まだ起動もできてないんでしょ?」  シェスは「それは……」と口ごもる。シェスが開発を担当しているファクターはアウトラメニウム鉱石を全身に使用しているファクターなのだが、起動すらできないという事象に見舞われていた。  しかし、これは二年前の大戦時からであり、シェスが担当になったのもこれが要因であった。  キャニーは世界連合軍製の主力量産機となるためのファクター[ハイパー・F]の設計・開発に携わっているためこのファクターには関係していない。 「姐さんもこの機体の開発に関係してたら大変さが分かるッスよ」 「そんなこと言ったって、シェス君が新しい駆動方法を考えたんだから。シェス君がちゃんと責任を持つべきよ」  シェスは頭を掻いてため息を吐く。  新型のファクターが起動しない理由は駆動方法が原因だとシェスが異を唱え、新たな駆動方法[エネルギー循環システム]を考案、そのシステムの開発・導入の担当になっていたのである。
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