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「今日の雨はまるでパーカッションのアンサンブルみたい」
「パーカッション?」
「そう。なんだか追いかけられている感じ。
……ソワソワしちゃって落ち着かないや」
教室の窓から海を見下ろしながら、優有(ゆう)は静かに息を吐く。
「ねえ、早く始めちゃお」
「そうだね、ちゃんと揃ってる??」
「あとは私と尚美(なおみ)の分だけだよ。ハサミ、ある?」
「あるある。針は?」
「安全ピンでいっか」
「……じゃあ始めよっか」
椅子を引くとカタンと乾いた音がした。
二人で手分けをし、優有が海を見ていた窓だけを残し内側から教室の戸締りをする。
最後に教室の電気を消した。
廊下から洩れてくる光だけの、薄闇の世界。
白いカーテンがふわりと風に揺れる。
「始めるよ」
「うん」
緊張しているのか、少し優有の声が震えていた。
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