いいから、隣に座れよ。

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「お仕事終わったんですか」 「社用車で一件届け物したら終わり。一緒に行かないか」  え! お誘い! 一緒に! 届け物!  興奮しながら時計を見ると、十七時ちょっと前。わたしの門限は十九時だ。いつもなら絶対出られないけれど、今夜お父さんは取引先と会食の予定が入ってる。 「行きます。もっと早く起こしてくれたら良かったのに!」 「優衣の寝顔が可愛いから、ずっと見てたんだよ。(サトシ)に許可取ってくるから、玄関で待ってな」  面と向かって赤面なセリフをさらりと言ってのけるのはさすが。上着を羽織る姿さえ颯爽としている。ずっと見てたのは書類だとわかっていても、無闇に気分が高揚しちゃうよ。 ***    首都高の湾岸道路を下りて目的の会社へ向かった。その間ずっとドキドキしっぱなしだった。佐原さんが運転する車で、初のドライブ。  ラジオからは、しっとりした洋楽が流れてて否応なく気分が上がる。このままずっと、ふたりでいられたらなぁ……。 「優衣、お待たせ」  取引先の駐車場に停めた車の中でおとなしく待っていると、十分ほどで佐原さんが戻ってきた。 「お疲れさまでした。このあとはどうするんですか」 「食事でもいいし……観覧車でも」 「えっ?」 「前に言ってただろ、観覧車乗りたいって。ちょうど帰り道にあるけど。どうする」 「行きたいです!」  行くに決まってます。お父さん毎日会食で帰るの遅かったら、佐原さんとお出かけする機会も増えるのに。
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