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月の丘公園
眠れなくて何度も寝返りをうっていたのに気づいたら眠っていた。
夢の中で乃ノ花ちゃんらしき女の子に会った。背が高くて髪の長い女の子だった。
朝、目覚めると優衣さんはもう着替えてメイクもしていた。
「おはよう、ゆずちゃん。ご飯、食べよっか。顔、洗っておいで。」
朝ご飯はホットケーキとサラダとコーンスープだった。
優衣さんの料理はなんだっておいしくて、なにより見た目がきれいだった。
美術の教師なんかやってないでカフェでも開いた方が、優衣さんには合っているんじゃないだろうか、なんて考えてしまった。
私は自分が持っている服の中で1番のお気に入りを引っ張り出して着替えた。
「ゆずちゃん可愛い。そうだ。こっち、おいで。」
優衣さんは、私を鏡の前に座らせて櫛で髪をとき始めた。
「今日は、とびきり可愛くしなくちゃいけないからねー」
と言って、私の髪を一束すくった。
鏡の中の私はどんどん変わっていく。
最後に真っ赤なリボンがつけられた。
「はい、完成」
私がきれいになった髪の毛を頭を右に向けたり左に向けたりして見ている後ろで、優衣さんは満足気に微笑んでいた。
その日は雲ひとつない青空が広がっていた。
優衣さんに連れられて待ち合わせの月の丘公園というところに行った。
公園の真ん中の噴水のところに背が高い男の人と、黒髪のショートの女の子が座っていた。
「やっほー」
と、優衣さんが元気よく手を振ると男の人も「よお」という感じで手を上げた。
「久しぶりー。もう、こっち来てたならもっと早く教えてくれたって良かったじゃない」
「昨日電話したろ?」
優衣さんと男の人は公園にも何組かいる他の恋人同士とおんなじように見えた。
「乃ノ花ちゃん?はじめまして。私は深月優衣。お父さんのお友達よ。まあ、目が大きいのね。綺麗だわ。お父さんに似なくて良かったわね。」
「おい、そりゃ失礼だぞ」
そう言いながらも2人は笑顔だった。
「乃ノ花ちゃん、この子は私の姪。結月って名前なの。仲良くしてあげて。」
「はい。」
乃ノ花ちゃんは一歩前に出て
「よろしくね、結月ちゃん。」
と、手を差し出した。
笑うと真っ黒ですこしふんわりとカールした髪が揺れた。
「よろしく、お願いします。」
私はぎこちなく手を握った。
私たちは会ったばかりなのにすぐに打ち解けて、公園で花を摘んで遊んだ。
乃ノ花ちゃんはシロツメクサで花冠を作ってくれた。
おままごともした。
乃ノ花ちゃんは私より5センチくらい背が高くて、優しくて、まるでお姉ちゃんができたみたいだった。
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