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また別の時では
「かー! やっぱ俳優ってのはかっこいいすねぇ」
「見てくださいよ、創英さん。このイケメン。顔とりかえてほしいレベルっすよ」
そう言って、創英の部下たちがとある雑誌を創英に見せた。
肌の綺麗な細長い目をしたイケメンが、口端をゆるやかに持ち上げ微笑み人差し指を唇に触れるか触れないかぐらいにあててしーとしている姿だった。
「ふーん……ま、俺ほどではねぇな」
顎をさすりつつ目をキランと光らせた創英に「うわー、反論できないのがすげぇ悔しいんすけど」と部下は苦笑いしていた。
「だろ?」と得意気に創英は返すが、その胸中では
和服を纏って美しい姿勢で花を挿す戒の方が百億倍格好いいしあの輝きは誰にも真似できねぇな、うん。かがんだ時にちょっと布が落ちて肌から服が浮いての鎖骨のチラリズムの最高さがまたいいよな、うん。
と1人で納得していた。
またある時は部長の孫自慢で
「金井君見てくれ、ほら、可愛いだろう。ウチの孫娘なんだ」
と乳児が屈託なく笑っている写真を部長から見せられ「わー、いいですね。とても可愛いじゃないですか。きっと将来美人になりますね!」と煽てを投げるが、胸中では
世界一美しい戒の足元にも及ばねぇな
と断言している。
そんな感じで、創英はいつでもどこでも戒のことが頭の中に必ずあり、ベタ褒めしては「やっぱり俺の戒は凄い」といつも勝手に誇らしげになっているのである。
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