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茶屋の看板娘が二人に気づき、近づいてきた。
お盆を前で抱え、にっこりと笑って言った。
「いらっしゃいませ、何になさいますか?」
巽は近くの椅子に座ると、にっこりとほほえみ返して言った。
「いつものを」
そしてチラリともう一人の男を見やる。
「お前さんは何にする?」
巽に言われて、指を三本立て、みたらし団子を三つ注文した。
椅子に座り、足を組む。
スラリと白くて細い、だけど程よく筋肉のついた足が裾から見える。
暫くその艶かしい足を眺めてから、巽が口を開いた。
「なぁ、利よ。そろそろ琥珀楼に移っては来ないか?」
それを聞いて、利と呼ばれた男が苦笑いを浮かべる。
「巽さん、逢う度にそうやって誘ってくれるのはありがたいが、いいかげん諦めてはくれないかね?」
丁重に断る利の手を、突然巽が手に取り優しく包み込んだ。
利が片眉を上げる。
「利、何度断られても私は諦めないよ。お前さんは、琥珀楼が男相手専門だからと乗り気じゃねぇかもしれないが…」
巽の言葉にくつくつと笑い、頭を左右に振った。
「違う、そうじゃないさね。」
異を唱えた利に巽が首を傾げる。
「なら、何だと言うのだ。」
利なら、きっと琥珀楼の頂点に上り詰める。
巽はそう信じて、諦めずに今日までずっと勧誘を続けてきたのだ。
納得のいく答えじゃなければ気持ちが修まらない。
利は睫毛の長い切れ長の目で巽を見つめ、言った。
「巽さん、あんたとは楼主と店子としての関係ではなく、こうして一対一の間柄でいたいからさ。」
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