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「君、オレのこと……」
「大好きですよ。あとは貴方が受け入れてくれたら、みんな幸せです」
一点の曇もない眼でそう言いきった。そして静かに微笑んだ。
なんかおかしい。絶対におかしいに決まってる。
「なんだそのオレの感情まる無視の理屈は!」
「……? 先生が僕を好きになってくれたら良いだけですけど」
だからキョトンとした顔するな! こいつ宇宙人かよ。全然会話成り立たねぇじゃん。
嫌というほど近くにある顔には心底不思議そうな表情が広がっており、自分が正しいと疑っていない顔だ。
「先生が母と別れる、それだけじゃあダメだ。貴方はもっと愛を知らなきゃいけないんだ。僕なら教えてあげられる……」
恍惚とした顔でそう宣う彼の目は、これでもかとギラついていて改めて自分より大きな身体を持つ雄なのだと実感させられた。
「レイプはしたくなかったけど、今の僕にはあまり時間がないんです。とりあえず三日しか。それに脅迫なんて卑怯なことはしたくない」
「れ、レイプ!?」
改めてその響きのおぞましさに、思わず身体が震えて鼻の辺りがツンとなった。
怖い、怖くて泣きそうだ。
(っていうか思い切り卑怯な手法じゃあねぇかよ)
男の自分がこんな体験するなんて思ってもみなかった。
「先生、泣いてる……可愛い」
「な、泣いてなんかねぇよ。この性犯罪者め」
「うん。先生の為なら犯罪者にでもなるよ、僕は」
ああ、会話がまるで噛み合わない。
オレのせいだろうか。オレが、彼を壊してしまったのだろうか……。
近付いてくる唇に、瞳を閉じた。
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