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青少年は暴走す
相変わらずこのガキは何を考えているのか分からない。
「ねぇ先生。昨日歩いてた女の人、誰なんです?」
「余計なこと考えずに、勉強しろ」
(昨日? 気持ちわりぃな。お前見てたのかよ)
……なんてもはや言わない。こいつはオレのストーカーだって知ってるから。
「近くの短大の人ですよね。この前合コンで出会った人ですか?」
「……知ってるなら聞くな」
「先生の口から聞きたかったんですよ」
このガキ、まともじゃあない。母親の浮気相手のストーカーしてくるんだぜ。そしてそれを隠そうともせず、プライベートに踏み込むような話を振ってくる。
「僕ね。先生のこと、なんでも知りたくなっちゃったんですよ」
うっとりとした顔でこちらを見つめるこの気色悪いガキを、オレは仕事だからと必要以上には邪険にしない。
「ねぇってば。先生。昨日会った女性……タケダさんでしたっけ? セックスはもうしたんですか」
「……問題、解けよ」
「出来てますよ」
絞り出した声に、さらりと答えられた。既に声変わりを終えたその声帯からは、低く落ち着いた声が言葉となって紡がれる。
オレの全く理解できない事をほざいているが。
「あ、そう。じゃあこっちもな」
「はぁい」
カリカリというシャーペンが紙に擦れる音だけが部屋に響く。
「……先生ってどんなセックスするんですか?」
「もう終わったのか」
「いえ、まだ」
「黙ってやれ、エロガキ」
……あの真面目で素直で礼儀正しい太郎君はどこへ行ったんだ!
オレは適当にかわしながらも、内心かなり動揺している。
彼がオレをストーキングするようになって数週間。
成績は悪くなっていない。むしろ上がっているくらいだ。
下手したらもはや家庭教師要らねぇんじゃねぇの。こいつ。
しかも成長期なのか鍛えているのか知らないが、少しガタイが良くなっている気がする。
オレより年下のクセに、オレよりでかいし。
(なんか勝てる気がしなくなってきたんだけど……)
その丸太みたいな足や腕で、オレをぶちのめすつもりか!?
それともストーキングで得た情報で脅すとか。
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