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1.とある義賊のお気に入り
ええ、あの子のことは気に入っていました。
目端が利いて、すばしっこかったし、それでいて度胸もありましたよ。
なによりかわいらしい顔をしていたので、弟のようにかわいがっていましたよ。
まあ、とにかくあの子は私のお気に入りでした。
私たちが北軍に取り囲まれて、一網打尽にされたのはずいぶん前のことです。
5年ほど前ですね。
もちろん、断頭台にかけられる前に脱獄していましたけれどね。
あの子がいなくなったのは、大捕り物になった混乱の中ででしょうね。
一緒に脱獄した仲間の中にはあの子はいませんでした。
あの当時の生死は判然としませんが、未だに私に連絡をとろうとした様子もないところをみると、もう生きてはいないのでしょう。
え? あの子が生きているですって?
あの子そっくりな男を見かけた、と?
男……そうですね。もう5年も経ちますから、「あの子」なんて年齢でもありませんか。
……そう、ですか。
面白い情報をありがとうございます。あの子がいなくなったことは、ずっと気にかけていたのです。
会いに行ってみることにします。
(南部の新聞社のインタビューより抜粋)
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