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月明かりの下で
祭りの喧騒が遠くで聞こえる。
ぼんやりとした頭で空をあおぐと、着物を乱し白い肌を露にしたあの子が俺を見下ろし、不敵な笑みを浮かべていた。
月明かりに照らされて白く浮かび上がる肌に、くらくらとめまいがするような甘い色香を感じて酔いしれる俺は夢の中にいるようだった。
湿った地面の感触を背中で受け止めながら、滴る汗と沸き立つ熱の狭間で、俺の心と体は簡単に掻き乱されていく。
突き上げられた瞬間、俺の中でなにかが弾け、もう戻れないとその時悟った。
夢のひとときはあっという間。
陽炎のようにあの子の匂いも、熱も、俺の腕の中からするりと逃げていく。
覚えているのは、重ねた肌の感触とぬくもりだけ。
俺はまだあの日のことを忘れられずに、あの子の面影を探している。
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