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  (え? なぜ照れる?)  自分が呼べと言ったのに、なぜそんなに照れるのか。  ちくしょう、よくわからないが、かわいい……。  暁翔はつられて照れないよう、平静を取り繕った。 「雅は家業を継ぐつもりなのか? 弁当屋は家族でやってるんだろ?」  雅が首を横に振った。 「継がないよ。お店は姉夫婦が継ぐって決まってるんだ。僕はただのバイト。本業は別にあるから」  いつも弁当屋の店頭で顔を見るので、他に仕事をしているとは思っていなかった。どんな仕事をしているのだろう。 「暁翔は、キラリボーイズって知ってる?」 「聞いたことはあるけど、よくは知らないな」 「あー、やっぱり。アイドルに興味なんてないよね?」 「まあ……」  正直、ほとんど興味がない。  察した雅が苦笑した。 「あのね、キラリボーイズっていうのは、男ばかりを集めたアイドルグループなんだ。芸能事務所に所属してて、人気のあるメンバーはテレビに出て歌ったり踊ったりしてるんだよ。人数は四十人くらい。僕はその、四十人の中の一人なの」 「……雅が?」 「うん」 「マジ、で? マジで……アイドル!?」  思わず大きな声が出た。どうりでかわいいはずだ。二十六歳とは思えない肌つや、大きな瞳、小さな顔、人形のようなすらりとした手足。一般人とは違う美しさがある。 「雅もテレビに出てるのか!?」 「僕はテレビの仕事はほとんどないんだ。びっくりするほど人気ないから」 「そんなにかわいいのに!?」  うっかり心の声が漏れてしまい、雅が赤面して「ひゃっ」と両手で顔を隠した。だからなんで女の子っぽいんだ。 「僕より顔のいいやつなんていっぱいいるし、プロデューサーからはナヨナヨするなってよく怒られてるんだよ。僕はいつも人気メンバーの後ろでチョロチョロ踊ってるだけの、バックダンサーやってるの」 「それでもすごいよ! ライブのDVDとかブルーレイある? 踊ってるところ、見てみたい」 「あるにはあるけど……。暁翔は明日、休み?」  明日は土曜日なので仕事は休みだ。 「ああ」 「じゃ、明日DVD持ってくるね?」 「よし!」
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