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「この嘘つき野郎がぁ! こんなん新婚の部屋やないかーい!」
「うががっ」
京介の太い腕でヘッドロックをかけられ、暁翔はギブギブと腕を叩いた。
「どんな女や? かわいい系か? 美人系か?」
腕から解放された暁翔は「できてないってのに。ったく、お前は学生気分が抜けないなぁ」と笑った。
やれやれとキッチンに戻り、冷茶をグラスに注いでテーブルに置く。
椅子に腰かけた京介が、冷茶を惜しげもなく一気に飲み干した。
「ぷはー! うめえ!」
暁翔も向かい側に座って一息ついた。
「部屋の模様替えをしたのは男の友達だ。最近よく遊びに来るんだよ。そいつの好みで色々買い足したら、こうなった。俺的には問題ないよ」
「男ぉ!? オトメンってやつか? そうやないと、こんなに女っぽくならんやろ」
「かわいいし男臭くはないけど、オトメンじゃないと思う」
「うーん、怪しいなぁ。やっぱり女とちゃうんか? 訳ありの女とか」
「違うって」
「名前は?」
言えば女性と誤解するだろうな、と思いつつ「あー……雅」と答える。
「みやび! 雅ちゃんか! 女やな」
「だから違うんだって。もういいだろ、早く芝居の打ち合わせをしようぜ」
無理矢理話題を変えると、京介が「ちっ、わかったよ」と舌打ちした。
そして一拍置き、今度は「はあ……」と盛大な溜息を吐く。忙しい男だ。
「実はなぁ、相談があるんや。次の冬公演、俺、不参加でもええか?」
「なんでだよ。理由は?」
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