2

12/23
前へ
/96ページ
次へ
 暁翔は渋い表情ながらも頷いた。 「わかったよ。演出、やるよ」 「おお! おおきに! 我が友よ!」 「うるせえよ、今回だけだからな」  京介に無理矢理握手をさせられていると、玄関のチャイムが鳴った。  きっと雅が来たのだろう。立ち上がって玄関に向かい、引き戸を開ける。 「暁翔、たこ焼き買ってきたよ!」  雅がパッと破顔してビニール袋を持ち上げて見せた。暁翔も自然と笑顔になる。張り詰めていた気持ちがなごむ。 「お、いい匂いだな」 「今日ね、商店街で夏祭りをやってるんだよ。小さいけど賑やかなお祭りなんだ」 「後で一緒に行ってみる?」 「一緒に? 行きたい!」  子どもっぽく喜ぶ雅がかわいくて、暁翔は目を細くした。 「そうだ、京介を紹介するよ」  振り返ると、呼びに行くまでもなく、ドタバタと京介が現れた。 「どうもー! 松本でっす!」 「ど、どうも、花江です……」  京介の圧に押された雅が萎縮する。 「暁翔、まさかこの子が雅ちゃん?」 「そ、そうだよ」 「へえ!」  京介は一瞬目を見開いたが、やがてニヤニヤした笑みを浮かべた。 「なるほど……かわいい系か」  値踏みするような視線を向けられ、雅がますます萎縮する。 「おい、あんまりジロジロ見るな」 「見てええのは俺だけやってか? さてはおまえ、ベタ惚れやな?」 「バ、バカ! 何言ってんだよ!」  暁翔の顔が赤くなった。誤解されるようなことを言うのはやめてほしい。平常心を保てなくなる。 「すまんすまん。なんか俺、お邪魔みたいやな。帰るわ」  京介はそそくさと靴を履き「後で連絡するな。雅ちゃん、ごゆっくり」と言って堂島家を出て行った。 「僕のほうが……邪魔しちゃった?」  雅が上目遣いで恐る恐る問う。
/96ページ

最初のコメントを投稿しよう!

344人が本棚に入れています
本棚に追加