344人が本棚に入れています
本棚に追加
暁翔は渋い表情ながらも頷いた。
「わかったよ。演出、やるよ」
「おお! おおきに! 我が友よ!」
「うるせえよ、今回だけだからな」
京介に無理矢理握手をさせられていると、玄関のチャイムが鳴った。
きっと雅が来たのだろう。立ち上がって玄関に向かい、引き戸を開ける。
「暁翔、たこ焼き買ってきたよ!」
雅がパッと破顔してビニール袋を持ち上げて見せた。暁翔も自然と笑顔になる。張り詰めていた気持ちがなごむ。
「お、いい匂いだな」
「今日ね、商店街で夏祭りをやってるんだよ。小さいけど賑やかなお祭りなんだ」
「後で一緒に行ってみる?」
「一緒に? 行きたい!」
子どもっぽく喜ぶ雅がかわいくて、暁翔は目を細くした。
「そうだ、京介を紹介するよ」
振り返ると、呼びに行くまでもなく、ドタバタと京介が現れた。
「どうもー! 松本でっす!」
「ど、どうも、花江です……」
京介の圧に押された雅が萎縮する。
「暁翔、まさかこの子が雅ちゃん?」
「そ、そうだよ」
「へえ!」
京介は一瞬目を見開いたが、やがてニヤニヤした笑みを浮かべた。
「なるほど……かわいい系か」
値踏みするような視線を向けられ、雅がますます萎縮する。
「おい、あんまりジロジロ見るな」
「見てええのは俺だけやってか? さてはおまえ、ベタ惚れやな?」
「バ、バカ! 何言ってんだよ!」
暁翔の顔が赤くなった。誤解されるようなことを言うのはやめてほしい。平常心を保てなくなる。
「すまんすまん。なんか俺、お邪魔みたいやな。帰るわ」
京介はそそくさと靴を履き「後で連絡するな。雅ちゃん、ごゆっくり」と言って堂島家を出て行った。
「僕のほうが……邪魔しちゃった?」
雅が上目遣いで恐る恐る問う。
最初のコメントを投稿しよう!