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「おい! あんたら、この子に何か用か」
暁翔は考えるより先に雅の肩を抱き、細い体を自分のほうへ引き寄せた。威嚇するように男達を見下ろす。彼らより上背があるので、迫力が出るのはありがたい。
男達は顔色を変え、ニヤニヤした口元を引きつらせた。
「な、なんでもないっす」
「彼氏持ちかよ、行こうぜ」
ふてくされた様子で、男達が人混みに消える。
暁翔は胸をなで下ろした。雅が男だとばれなくてよかったと思う気持ちの他に、とにかく、他の男にとられなくてよかったという安堵もあった。
「大丈夫か?」
「うん。男だとばれたらどうしようって、ヒヤヒヤしちゃった。助けてくれて、ありがと」
「いや、俺も焦った。もう帰ろう」
いたずらの時間は終わり。これ以上ここにいて、雅がキラリボーイズのメンバーだと知られるのも厄介だろう。
暁翔は綿飴を食べ終えた雅を伴い、商店街の出口に向かった。
「ちょっと……待って」
雅に、浴衣の袂を掴まれる。
「どうした? 何かほしいものがあるのか?」
「ううん。あのね、はぐれたら困るし、だから、あの……」
「ん?」
雅が恥ずかしそうに俯き、耳を赤くして消え入りそうな声で言った。
「手……繋いでほしい」
いたずらのノリや、冗談とは思えない口調。必死に、勇気を振り絞って発した言葉だと感じる。
ドクンと、暁翔の鼓動が跳ねた。
「手……?」
「や、やっぱり、嫌だよね……」
雅は下唇をかみ、振り切るように急ぎ足で歩き出した。
「雅?」
「ごめん。今の忘れて!」
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