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(まさか、考え過ぎだ。俺だって意識してるわけじゃない、はず……)  雅が泊まるときはいつも、適当なおしゃべりをした後「おやすみ」と言って眠るだけなのに、今夜はどうも調子が狂う。  考えるのはよそう、さっさと寝てしまおう。  暁翔が目を閉じたとき、雅が遠慮がちに声を発した。 「ね、聞いてもいい?」  暁翔の肩が小さく震えた。 「あ、ああ。何?」 「あのね……暁翔が大学生の頃に一緒に住んでた友達って、京介君?」  思いがけず京介の名前が出たので、少し驚いた。だが、モヤモヤした思考から逃れられて安堵もする。息をつき「そうだよ」と答えた。 「やっぱり。そんな感じがした。二人の間に遠慮がない雰囲気だったから」 「あいつとは、つき合いが長いからな」 「京介君と劇団の話をしてたの? 次の公演のこと?」 「ああ。大したことじゃないけど……いや、大したことか」  暁翔は京介が演出家、西園寺から脚本を依頼されたことを掻い摘まんで説明した。  雅が寝返りを打ってこちらを向く。 「西園寺さんって有名な人じゃん! 京介君って才能があるんだ」 「そうだな。あいつは役者としても、脚本家としても才能がある。俺とは違って、これから演劇人として大きくなる可能性を持ってるんだ。いいよな」 「……(うらや)ましい、の?」  暁翔は暗い天井を見つめて嘆息した。 「……うん。雅にだから本音を言うけど、俺も京介みたいな才能がほしいと思ってた。そしたらプロの演出家になれるかもしれない。そうなれたら最高だなと思ってたよ」 「思ってた……。過去形なんだ」 「まあな。俺にはプロでやれるほどの才能はない。京介みたいに就職せずに、芝居に打ち込むストイックさもない。趣味としてやるのが一番合ってると思う」  誰もがなりたい職業に就けるわけではない。努力しても叶わない夢はある。アイドルをやめなければならない雅になら、気持ちをわかってもらえる気がした。 「そっか……。それも一つの選択だよね」  雅の声音は優しい。 「それとさ、これは憶測なんだけど、京介が『西園寺企画』の舞台を成功させたら、リアルは解散する気がしてるんだ」
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