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 ぎこちなく、彼の華奢な肩に腕を回した。  雅の笑みが深まり、より強く抱きつかれた。  客観的に見たら、今の状態は恋人同士のいちゃつきだろう。 (ち、違う。友達同士で喜びを分かち合っているだけだ)  脳内の言い訳が苦しいのは、気のせいか。  暁翔は小さく首を横に振り、キラボチャンネルの料理コーナーについて考えた。  本当に、おもしろいコーナーだったことに間違いはない。  スマホでSNSを覗いてみると、視聴者の反応もいい。聖哉のファンは、いつもと違う聖哉が見られて楽しかったと喜んでいる。キラボの中ではおとなしいイメージがあった雅も、かわいいのに手厳しい母親みたいだと評判になっていた。  数日後、雅からスマホに『また料理コーナーに呼ばれたよ!』と連絡があったときは、暁翔は自分のことのように嬉しかった。事務所との契約の解除も延期になり、番組前半の歌のコーナーにもバックダンサーとして出演できると言う。  雅は次の放送でもやんちゃな聖哉を叱りつけ、美味しい料理を作った。料理コーナーは大反響。その後も聖哉とコンビで番組出演を続け、しだいに雑誌の取材やラジオ番組への出演など、アイドルの仕事が増えていった。    一ヶ月が過ぎる頃には、反比例するように『花江』での仕事が減った。二ヶ月も経つと、忙しさから堂島家に訪れる回数も減った。  アイドルの仕事が増えて良かったと思う反面、暁翔は雅に会えない寂しさをひしひしと感じた。電話やスマホのメッセージのやり取りだけでは、寂しくて物足りない。  そのうち暁翔も劇団の冬公演の稽古が始まり、にわかに忙しくなってきた。雅に会えず、もどかしく思っていると、彼からスマホに『事務所との契約が正式に更新されたよ。大きな仕事ももらえそう!』と連絡があった。『おめでとう!』と返信する。なんとか会って祝いたいが、なかなか二人の都合が合わない。
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