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 弁当を買って帰宅すると、雅から電話がかかってきた。笑顔でスマホをタップする。画面に『雅』という名前が表示されるだけで、つい顔がほころんでしまう。 「久しぶりだな」 『ほんとだね!』 「元気か? さっき『花江』に寄ったところだったんだ。もう家に帰ってるのか?」 『ううん。忙しくて家に帰る暇がないから、今日は都内のホテルに泊まってる。なごみ弁当、作れなくてごめんね』 「気にしなくていいから。俺のことより、雅はちゃんと食べてるのか? 休みはもらえてる?」 『ふふ、心配してくれてありがと。あのね、ちょっと聞いてほしいことがあって』 「何? なんでも言えよ」  暁翔はソファーに腰かけ、雅の話を待った。 『ありがと。えっと、今から話すのは全部オフレコなんだけど、実は大晦日のライブで、航貴がキラボを卒業するんだ』  もともと俳優志望だった航貴は、以前からキラリボーイズを卒業して俳優業に専念したいと事務所の幹部に相談していた。  だが、まだアイドルとして活動させたい事務所側は首を縦に振らなかった。不満を溜めていたときに『キラボチャンネル』のバラエティコーナーで仲の悪い聖哉と組まされ、航貴は腹を立てて収録をボイコットした。  本来なら厳重注意され、関係者に謝罪しなければならない。しかし航貴は、もうアイドルはやりたくないと逆に強く出た。事務所側は仕方なく航貴の卒業を認め、俳優への転向が決まったそうだ。  アイドル業界の裏側を聞き、色々あるんだな……と感心する。 『それで大晦日のライブのときに、航貴の卒業と、新しいフロントメンバーが発表されるんだ。僕がね、次の新メンバーだって』
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