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 人心地ついたところで、京介が風呂に入って寝ると言い出した。梨乃はもう一杯だけ茶を飲んだら帰ると言う。  夜が更け、気温が下がってきた。  浴室から流れてくる京介の鼻歌を聞きながら、暁翔は梨乃に新しい茶をいれた。  梨乃がダイニングの椅子に座り「ありがと」と言って微笑む。長いストレートの髪がさらりと揺れた。 「私ね、劇団のことが気になってたのはほんとだけど、実は暁翔の家を見てみたかったから、思い切ってついてきたの」  暁翔も椅子に腰かけ「へえ、なんでだ?」と問う。 「そりゃ……気になったから?」 「俺の家が? ただの古い家だけど」 「相変わらず鈍いなぁ」  小声でボソッと言った梨乃が、リビングに目を向けた。  棚の上に並ぶアロマキャンドル、観葉植物の鉢植え、そして食器棚にあるペアの湯飲みを順番に眺める。 「この部屋のインテリア、すごくかわいいよね。女の子がコーディネイトしたみたい」  茶を飲もうとした暁翔は、ブフッと吹き出しそうになった。 「暁翔、最近はずっと彼女がいないみたいだったけど……できたんでしょ」  探るような目を向けられる。 「い、いや、その、彼女ってわけじゃ」 「つき合ってないの? だったら恋人未満ってこと?」 「う、うーん」  言い淀んでいると、脱衣所から「おーい! タオルどこやー!」という京介の声がした。バスタオルの置き場所がわからないらしい。 「ああ、今行く!」  リビングを出て脱衣所へ向かう。梨乃に雅のことを話すのは臆するので、呼ばれて助かった。彼女が同性愛に理解があるかわからない以上、迂闊に喋らないほうがいいだろう。
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