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 弁当を受け取った暁翔は、姉に会釈をして店を出た。  吐く息が白い。漆黒の夜空を仰ぐと、雪がちらほらと舞っていた。コートの襟元を合わせて身震いする。  早く帰ろうと足を踏み出したとき、すぐそばに一台のタクシーが停車した。ドアが開き、車内から大学生くらいの細い男が現れる。キャメル色のコートを着て、フードを被った……。 「え……!?」  驚きのあまり、暁翔は思わず声を発した。  男が振り返り、「あ……」と口を開ける。  雅だった。  ふわふわのファーがついたフードを被り、顔を隠すようにしているけれど、間違いなく彼だ。 「ひ、久しぶり」  ドキドキしながら声をかけると、彼は困ったように下を向いた。 「う、うん」  暁翔も戸惑い、頭をかく。会えたのは嬉しいが、唐突すぎて焦る。 「あ、あのさ、ハワイのお土産、ありがとな」 「う、ううん」 「イルカのキーホルダー、かわいかった。チョコレートも美味しそうだし。一緒に食べようって約束した……よな?」  自信のない問い方になった。  雅が目を泳がせ、曖昧な笑みを浮かべる。 「そう……だったね。でも、ごめんね。忙しいから、暁翔の家には当分行けないと思う。チョコレートは友達と食べて。じゃあね」  逃げるように、雅は店の裏へと去って行った。 「ちょ、ちょっと待ってくれ!」  素っ気ない態度にショックを受けつつ追いかける。今を逃したら、次はいつ会えるかわからない気がする。  だったらもう、言ってしまおうか。
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