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翌日は晴天。
午後、約束通り堂島家にやって来た雅は、Tシャツとジャージという出で立ちだった。首にはタオルをかけている。
「掃除するって言ったでしょ」
本気で掃除をするつもりらしい。
「別にいいって」と言っても、にっこり微笑まれるとどうにも拒めない。ジャージ姿もかわいい。だったらせめて協力しなくてはと、暁翔は手伝いを申し出た。
雅の指導の下、いる物、いらない物を分別し、ゴミを出したら掃除機をかけ、フローリングにワックスをかける。母親が再婚するときに置いていった観葉植物の鉢植えは、雅が枯れ葉を積んで綺麗に整え、テレビの横やキッチンなど、見栄えがする場所に配置し直した。
そして数時間後、堂島家の一階は見違えるほど綺麗になった。少々汚れていても平気だったのに、綺麗になるとやはり嬉しくなる。
「すごい! 雅、ありがとう!」
暁翔が感嘆の声を上げると、タオルで汗を拭っていた雅が「えへへ」と照れ笑いした。
「ほんとにありがとな。おかげですっきりしたよ」
暁翔は冷茶を冷蔵庫から取り出した。祖母直伝の水出し冷茶をグラスに注ぎ「座って、これでも飲んでくれ」と言ってテーブルに置いた。
「掃除はしたけど、余計なお世話だったかなって、実はちょっと不安だったんだ」
雅が椅子に腰かけ、控えめに微笑んだ。
「そうだったのか。まあ、最初は掃除なんかしなくていいのにって思ったけどさ、今はほんとに感謝してるよ。雅と一緒に掃除できたから、結構楽しかったし」
暑い中、一人で掃除をしたら今頃ぐったりしていただろう。掃除が全く苦にならなかったのは、雅とおしゃべりをしながらだったからに他ならない。
「ほんとに? なら、よかったぁ」
彼がふわりと相好を崩した。周囲に季節はずれの桜が咲いたような錯覚を覚え、暁翔の鼓動が小さく跳ねる。
「冷茶……飲んでみてくれ」
どうもこの笑顔に弱いなと、内心で狼狽えた。
「うん、いただきます。……わあ! おいしい! 暁翔が作ったの?」
「冷水で抽出したんだ」
実は雅のために朝から仕込んでおいた。掃除をしても、しなくても、一緒に茶を飲みたいと思っていたのだ。冷水で時間をかけて抽出した緑茶は、渋みのない口当たりになる。
「すっごくまろやか! 飲みやすい!」
「羊羹も食べる? 俺のお気に入り」
冷蔵庫から羊羹が入った箱を取りだし、持ち上げて箱を見せる。地元の商店街にある老舗の和菓子屋で買った、蒸し羊羹である。雅の表情が一段と明るくなった。
「おいしそう! 羊羹が好きなの? 結構渋いんだね。なんか……おじいちゃんみたい!」
「お、おじいちゃん!?」
ずっこけそうになると、彼がふふっと笑った。
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