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朝晩は涼しい風が吹くようになった、九月の夜。
暁翔は急須に温かいほうじ茶を作り、ペアの湯呑みをテーブルに用意して雅が来るのを待っていた。
今夜は雅が最後の仕事『キラボチャンネル』の収録を終え、堂島家に直行する予定になっている。約束通り、打ち上げをするのだ。
玄関のチャイムが鳴り、暁翔は最後までがんばったであろう雅を優しく迎えるつもりで玄関に向かった。
「おかえり。お疲れ様」
精一杯ねぎらう気持ちを込めて引き戸を開ける。雅は暁翔を見るなり、頬をほんのり朱に染めた。
「た、ただいま……って、言っていいのかな。一緒に住んでるわけでもないのに」
「ほとんど毎週泊まりにきてるんだから、似たようなもんだろ」
「う、うん」
収録で疲れたのか、雅はどこか浮かない表情だった。
暁翔はほうじ茶をいれた湯呑みをテーブルに置き、雅と向かい合って座った。
「収録、無事に終わったのか?」
「それが……変なことになったんだ。僕、料理コーナーに出演しちゃって」
テレビには映らない、料理を作るだけの仕事だったはず。
「え、どういうこと?」
雅がほうじ茶を飲み、ふうっと息を吐いた。
「えっと……」
彼の話によると、航貴と聖哉が収録直前にケンカを始め、怒った航貴がスタジオを出て行ったと言う。現場のスタッフは大混乱。とりあえず聖哉だけで録ろうと言い出した。
しかし聖哉は料理の経験がない。俺だけでは無理だとわめきだし……。
「それなら花江が一緒にやれって、ディレクターさんが言って」
「うん、それで?」
「聖哉と僕とで、オムライスと野菜スープを作った。聖哉がとんでもないことばかりするから、怒りながら」
「う、うん」
「終わったらディレクターさんが、意外と面白かったって言ってくれて、次もよろしくって」
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